あらすじ
「君は、公爵令嬢であること以外、何の魅力もない」
王太子ヘルムハイムから、そう言い放たれ婚約破棄された
公爵令嬢ヘレン・バートン。
――けれど彼女は、泣きもしなければ取り乱しもしなかった。
「政略結婚とは、そういうものでしょう?」
むしろ価値観が一致して清々しい、とさえ思っていた。
王太子が新たに選んだ婚約者は、
“奇跡の聖女”と称えられるマルガレーテ。
空中浮遊、治癒、神の啓示――
民衆を熱狂させる数々の奇跡の裏で、
教会は護符や聖具を売りさばき、富と権力を拡大していく。
だが、ヘレンは知っていた。
その奇跡が、すべて仕組まれた偽物であることを。
そして何より――
教会が「伝説の聖女ヘレンヘレンの転生」を
聖女マルガレーテだと喧伝し始めた時、
ヘレンは静かに、しかし確実に怒りを覚える。
なぜなら彼女こそが、
五百年前に聖女ヘレンヘレンと呼ばれた存在の転生者だったのだから。
「私が、詐欺の片棒を担いでいるみたいじゃない」
奇跡を暴くためでも、復讐のためでもない。
ただ、嘘を嘘のままにしないために。
聖女ではない公爵令嬢が、
本物の“力”で偽りの奇跡を崩していく――
静かで知的な、婚約破棄ざまぁ譚。