あらすじ
王国騎士団長の父と魔法師団長の母の間に生まれたジンク・クラッドは両親から教えを受け、周囲からは剣と魔法を極めた勇者の称号が与えられると期待されていた。
しかし、剣と魔法、どちらも一流にはなれど、勇者にはほど遠い。
なぜならジンクは生まれながらに誰もが授かるはずの「加護」を一つも持たなかったからだ。
ジンクが騎士となってから5年後、魔王が誕生し日々魔物との戦闘を余儀なくされていた。
魔王による侵攻で永遠に続くかとも思われた戦争のさなか、勇者が魔王を討伐したとの報告が届く。
世界が魔王討伐の喜びに包まれる中、ジンクの胸にあったのは安堵だけではなかった。
「魔王が討伐された今、俺は……何を見届けたいんだろうな」
ぷつぷつと気泡のように、今まで押し込めていた思いが湧きあがってきた。
賢帝が治める多種族の国がある、城下町はどのような雰囲気なのだろうか。
危険だが美しい山がある、山頂はどのような眺めなのだろうか。
無限に続くかのような花畑がある、どのような香りなのだろうか。
他国では様々な魔物が調理されているようだ、どのような味なのだろうか。
勇者はどんな世界を救ったのか。
今まで溜まっていた思いが溢れ出し、ジンクは歩き出していた。
そうだ、世界を旅しよう。
これは勇者になれなかった者が
勇者が救った世界を巡るお話し。
さあ、旅を始めよう。
世界の広さをこの目で確かめに。