あらすじ
幼い頃、暗闇の中で差し出された一つの手。
それを掴んだ瞬間から、二人の世界は静かに固定された。
帝国の姫君マリアベルと、彼女の隣に立つことを運命づけられた王太子レオニス。
恋ではない。
そう言い聞かせるには十分すぎる年月と、役割と、依存がそこにあった。
守る者と、守られる者。
離れられない理由は、愛よりも深く、名前を持たないまま積み重なっていく。
やがて起きた事件が、その均衡を揺らす。
立場を守るために選んだ沈黙。
姫としての自制。
胸の奥で息を殺し続けた、本当の感情。
それでも最後に崩れたのは、理性だった。
選んだのは正しさではない。
責務でもない。
ただ、好きな人の胸に飛び込むという、たった一つの行為。
これは、役割として並び続けてきた二人が、
もう戻れない場所へ踏み出してしまう物語。