あらすじ
――いっけなーい、遅刻遅刻!
そんな声が遠くから聞こえてきた。同時にバタバタと地面を蹴る音が近づいてくる。
目の前には十字路。そして時折足音に混じって、カリッと軽く砕けるような音も聞こえる。まるでトーストの表面に歯を立てたときのような音だ。
……うん、これはアレだな。
ラブコメなんかでよくあるファーストイベントだ。
まさか今まで何のドラマのない日々を歩んでいた自分が、こんな夢にまで見たラブコメ展開に遭遇することになろうとは。
……いや、泣いている場合じゃない。
足音はもうすぐそこまで来ている。今だ。俺は十字路に向けて駆けだす。
そしてその勢いのまま、曲がり角から一歩踏み出した。
「ぐほっ‼」
突如右頬に予想以上の衝撃が来た。俺は横っ面を思いきり殴られたように回転しながら吹き飛ばされる。
え、なんでそんなピンポイント?
固いアスファルトの感触を全身で感じながら頭にクエスチョンを浮かべていると、目の前にころころと転がってきたものがあった。
フランスパンだ。