あらすじ
善意は、必ずしも人を救うとは限らない。
大企業の次男として生まれ、何不自由なく育った少年・陽太は、幼い頃に“善意が誰かを傷つける現実”を知ってしまう。
募金は搾取され、救いのはずの支援は争いの火種となる。
それでも彼は目を逸らさなかった。
直接現地へ赴き、井戸を掘り、人に教え、残る支援を続けた末――内戦に巻き込まれ、命を落とす。
そして陽太は、異世界に転生する。
その世界では、転生者は災厄をもたらす存在として恐れられていた。
転生者を見つけ次第、排除する“正義”を背負う者――スズナ。
彼女に救われ、彼女を慕い、心を預けている少女――ユナ。
スズナは信じていた。
「転生者は全員、いずれ世界を壊す」と。
だからこそ、どれほど善良に見える相手でも、躊躇なく殺してきた。
しかし、陽太という存在が、その正義を揺るがしていく。
誰かを救おうとして傷つき、誰も切り捨てられず、それでも手を伸ばす少年。
陽太と出会い、スズナは初めて迷い始める。
ユナは、命の恩人であり“ヒーロー”だった彼女の中に、恐ろしさと、救いたい想いを同時に抱く。
――正義とは何か。
――誰かを救うために、誰かを切り捨てることは正しいのか。
やがて陽太は、二人の想いと世界の在り方を前に、
誰も選ばず、誰も捨てないという、あまりにも歪で危うい選択肢に辿り着く。
それは優しさか、逃避か。それとも、新しい“正義”なのか。
善意で人を救えなかった少年が、もう一度、世界と向き合う物語。