あらすじ
王太子から「香りのしない、価値のない女だ」
そう告げられ、公衆の面前で婚約破棄された公爵令嬢リリア・エーデルシュタイン。
香りが身分と感情を示すこの国で、香水を纏わない彼女は“悪役令嬢”として社交界から追放される。
けれどそれは、彼女自身が選んだ生き方だった。
香りで人の心を繋ぎ止めようとし、破滅した母の最期を見てきたから――
リリアは誓ったのだ。
香りで人を操らない、と。
王都の外れで小さな香水工房を開いた彼女は、人の感情を変える香水ではなく、記憶と心に“そっと寄り添う香り”を作り始める。
やがて評判を聞きつけ、工房を訪れたのは
感情を感じにくい体質を持つ、無口で冷たい第二王子・アレクシス。
香りを通して、少しずつ心を言葉にしていく王子。
香りを纏わず、自分自身で向き合うリリア。
「香りは心を操らない。ただ、心を正直にするだけ」
その信念が、凍りついた王子の感情をほどいていく――。
一方、香りに頼りすぎた者たちが迎える結末。
そして選ばれるのは、香りではなく“人”としての彼女。
静かで深い溺愛と、読後に優しい余韻が残る異世界恋愛譚。