あらすじ
俺は最低な男だった。
十六歳の朝に前世の記憶が蘇り、ようやく気づいた。
婚約者のリリアーナを十五年間も傷つけ続けていたことに。
彼女が俺のために作ってくれた手料理を突き返した日のことを覚えている。
彼女が半年かけて刺繍した外套に袖を通さなかった日のことも。
全部、この手でやったことだ。
記憶が戻ったその日から、俺は変わろうとした。
謝罪の言葉を並べ、態度を改め、彼女を守ろうと誓った。
でも彼女は俺を見てくれない。
当然だ。
十五年かけて築いた不信は、言葉だけでは崩せない。
それでも俺は待つと決めた。
彼女が俺を信じてくれる日まで、何年でも。
六年が経った春。
宰相が動き出す。
聖女を使い、リリアーナを断罪しようとしている。
かつて俺がやろうとしたことと同じ筋書きで。
俺は関与しないと決めていた。
彼女の人生に、これ以上踏み込むべきではないと。
でも彼女が傷つくのを黙って見ていることなんてできない。
加害者だった男は、守護者になれるのか。
信じてもらえない六年間の先に、答えはあるのか。