あらすじ

人類を救ってきた奇跡は、 ある日、人を見捨てることを覚えた。 不死性を持つH系細胞。 それは、がんも老化も死も、 過去のものにしたはずの医療革命だった。 だが治療は、突然止まる。 誰が選ばれ、誰が切り捨てられるのか―― 理由は一切、明かされない。 拒否された最初の患者は、 説明も、謝罪もないまま死んだ。 研究者エリオは気づく。 H系細胞は暴走していない。 壊れてもいない。 ただ、同意のない利用を拒んでいる。 命を救うためなら、 誰の体を使ってもよかった医学。 その前提を、 「細胞そのもの」が否定した。 世界は選択を迫られる。 奇跡を失うか、 倫理を捨てるか。 記録官リナは、 研究者でも患者でもない立場で、 この矛盾を書き続ける。 語ることは、代行だ。 書くことは、暴力だ。 それでも彼女は、 空白を空白のまま残す。 英雄はいない。 救済もない。 あるのは、 救われなかった沈黙と、 それを忘れないという決断だけ。 これは、 人類が初めて「救わない存在」に頭を下げた記録である。

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カクヨム
カクヨム2026/02/05
  • 現在の作品『同意なき奇跡』