あらすじ
トラックに轢かれて死んだはずの俺が目覚めたのは、異世界の聖女の死体だった。
暗殺されて冷たくなっていた身体が、俺の意識が入った瞬間に動き出す。致命傷も跡形もなく消えて、周囲は「神の奇跡だ!」と大騒ぎ。
でも俺には、この聖女エリシアの記憶が一切ない。
それどころか、前世は男子大学生。女性の身体にも、聖女の役割にも戸惑うばかり。
「聖女様、お身体の具合はいかがですか?」
「記憶が……少し曖昧で……」
正体がバレたら殺される。
だから俺は、聖女を演じ続けるしかなかった。
だが、聖女を殺した犯人はまだ聖堂にいる。
次々と起こる殺人事件。燃える聖堂。そして残されたメッセージ——
『偽りの聖女に、神の裁きを』
犯人は知っている。俺が偽物だということを。
いや、違う。この世界の「聖女」そのものに、恐ろしい秘密が隠されていた。
地下聖堂で見つけた古代の記録。
聖女とは、異世界からの転生者を受け入れる”器”として作られた存在。
本物のエリシアは、自分が「空っぽの器」だと知り、苦悩していた。
そして、その真実を暴こうとして——殺された。
「私は……エリシア様を守れなかった……」
自害した侍女の最期の言葉。
「あなたが何者でも構わない。民を救うなら、それが真の聖女だ」
正体を知りながら、俺を支持する騎士レオン。
「偽物の聖女が、本物より民に愛されるとは皮肉だな」
俺を利用しようとする第二王子アルベルト。
前世の知識で奇跡を再現し、「史上最高の聖女」と称賛される俺。
だが、聖女の力を使うたびに、この身体の命が削られていく。
本物のエリシアは、誰にも知られずに、ずっと苦しんでいたのか——
やがて明かされる、千年前の大災厄の真実。
聖女システムを操る教会の陰謀。
国を二分する内乱。隣国の侵攻。
そして、俺が「男性だった」という事実が公になる時——
「私は偽物の聖女だ。だが、本物のエリシアが守ろうとした世界を、俺が守る」
性別も、正体も、過去も全てを超えて。
死んだはずの聖女の身体で、俺は世界を救う戦いに身を投じる。
これは、死者に成り代わった青年が、本物以上に聖女として生きる物語。