あらすじ
地方都市の高校。
理科教師・桂幸彦は、校舎裏でいじめを受けていた同僚教師を、衝動的に止めてしまう。その一部始終を、第三者が撮影し、動画はネットに拡散される。
「教師による暴力」か、「正義の行動」か。
判断は割れ、桂は一躍“ネットの当事者”となる。
その場に居合わせ、桂を庇うように声を上げた女子生徒・坂下襟は、動画と共に注目を浴び、「令和のジャンヌダルク」と呼ばれる存在になる。
スナックで働く母に育てられ、十分に守られた経験を持たない襟にとって、世間の称賛と好奇の視線は、救いであると同時に息苦しい檻でもあった。
謝罪と感謝の入り混じった気持ちから、襟は桂に近づいていく。
一方の桂も、職場で孤立し、噂と監視の中で徐々に「教師としての自分」を失っていく。
二人は理科室や放課後の時間で言葉を交わしながら、越えてはいけない境界線を“越えないまま”、少しずつ削り落としていく。