あらすじ
作業療法士の久保は、手術を控えた患者・はなを担当する。
病室に流れる軽快な音楽とは裏腹に、彼女の身体は不安定で、心もまた揺れていた。
立つために差し出す手。
転ばせないための手。
リハビリの名のもとに交わされる、その何気ない接触は、いつしか二人の距離を静かに変えていく。
医療者として守るべき一線と、人として抑えきれない感情。
久保はその狭間で、自分の「手」が持つ意味に気づき始める。
退院の日が近づくとき、
彼が最後に差し出すその手は、救いか、それとも――。
これは、回復と別れの病室で交わされた、
触れてはいけない想いと、触れなければ歩けなかった現実を描く物語。