あらすじ
朝はいつも、決まった音から始まっていた。
彼女が起き、台所に立ち、湯を沸かす音。その背中を見ているだけで、語らずとも安心できる日常があった。
しかしある日、その音は途切れる。
部屋に残されたのは静けさと、わずかな生活の気配だけだった。
昼は窓辺で光を追い、夜は扉の前で耳を澄ませる。
誰かが来ても、いつもの距離感や音の順番は戻らない。
時間は進み、静かな違和感だけが積み重なっていく。
ある朝、部屋の空気がわずかに変わる。
聞き慣れた気配、鍵の音、そして探していた声。
そんな存在を、静かに描いた物語。