あらすじ
五年間 誰かのために働いてきた
外務省で書類を作り 交渉の下準備を整え 成果を出し続けた
けれど手柄は全て婚約者のものになった
名前を奪われていることに気づいていながら 私は何も言えなかった
ある日 婚約者はこう言った
三歩下がって歩け お前は俺の影でいればいい
その言葉を聞いた瞬間 私の中で何かが切れた
復讐ではない
抵抗でもない
私が選んだのは 撤退だった
置き手紙を残し 国境を越え 誰も私を知らない国へ向かう
持っていたのは五年分の給金と 自分が作った書類の写しだけ
たどり着いた帝国は実力だけが全ての世界だった
そこで私は 言葉少なな皇帝と出会う
彼は何も聞かずに私を雇い 何も言わずに私の仕事を見ていた
気づけば 閉店後の執務室に温かい茶が置かれるようになっていた
祖国が私を取り戻そうと動き出したとき 彼は静かに立ちはだかった
逃げた先で 私は何を見つけるのだろう