あらすじ
この国では、人は生まれながらに一輪の『華』の加護を持つ。
その『華』がもたらす『異能』こそが、身分も価値も人生も決めるすべてだった。
伯爵家に生まれながら、ただ一人『華』を持たずに生まれた朝霞すみれ。
『無華』と蔑まれ、家族からも存在を数えられないまま、静かに息を潜めて生きてきた。
そんな彼女の前に現れたのは、皇族に連なる五条宮家の嫡男である暁臣。
強大すぎる『異能』を宿し、誰とも距離を保って生きてきた青年だった。
本来なら交わるはずのない二人。
けれど彼は、すみれにだけ向けて、妙に静かな視線を向ける。
理由は語られない。
ただ、彼女の存在が、この国の価値観に小さな亀裂を入れていく。
政略、家の思惑、歪んだ序列。
『無華』であるがゆえに軽んじられてきた少女は、やがて「例外」として、否応なく注目の渦中へと引き上げられていく。
――選ばれる理由は、まだ明かされない。
これは、何も持たないはずだった少女が、世界の秩序を静かに揺るがしていく。
©︎無華の花嫁 / 木風