あらすじ
魔王軍との戦争で追い詰められたソルス王国は、国王勅令227号を発し、自分や教会、その他がかつて追放した一部の魔法使いに恩赦を与える代わりに宮廷へ出頭し「王の思う事をせよ」と命じた。
その最後の出頭者、死霊術師・ツェツィーリエは、宮廷魔術師に任官した証として銀のゴルゲットを掛けられる。これにより文字通り王に飼われる鎖付きの犬に成り下がり、王命を受けて四方へ汚れ仕事に向かわされることになる。
不浄で卑怯で危険な魔法を使うと評価される死霊術師・ツェツィーリエの監視役として同行するのは、正統を掲げ異端を嫌う神官オフィーリア。反発し合う二人の関係は、王命をこなす旅のなかで、互いの欠点を補いあうような相棒へと変化していく。
ツェツィーリエは、純白の長髪と冷えた物言いを持つ、寡黙で礼儀正しい魔女である。だがその本質は従順ではなく、権威に膝をつく形式のまま相手の急所を突く狡猾さと、目的のためには不名誉さえ飲み込む胆力を備えている。
彼女の目的はただ生き延びることではない。かつて反乱者として貶められ、歴史から消されかけた「カティリーナ家」の名誉を回復することにある。そのためにツェツィーリエは、屈辱の証である銀のゴルゲットをあえて受け入れ、王の犬として成果を積み上げ、失われたを取り戻そうとする。
王から彼女に与えられる仕事は、魔王軍との正面戦闘ではない。前線の視察と派遣軍の支援、裏切り者の粛清、逃亡魔術師の捕縛、粛清、死体処理――不名誉そのものだ。
この物語は、勇者のような、英雄の力だけでは救いきれないものたちを救おうと足掻く、英雄譚の隅っこの一幕を切り抜いた。名誉を取り戻すために不名誉へ身を沈めた魔女と、正統の名のもとに異端を縛る神官が、互いを知り、共通目標の為に共同する物語。