あらすじ
死んで棺桶に横たわる私。
40歳の誕生日を迎えたばかりで、癌に敗れた人生の終わり。
高校時代の恋人・Kに、結局「好き」をちゃんと言えなかったまま……。
別れは喧嘩別れ。後悔だけが残った。
そんな私の霊魂は、成仏できずに彷徨う。
未練が強すぎて、三途の川の門番に頼み込んだ。
「近いカルマの女性の体に、仮住まいさせて」――。
そして東京の雑誌社。
Kが働く部署に、人事異動で入ってきた女性・C。
彼女の歩き方、声、癖……すべてが、昔の私そのもの。
Kの視線が、C(私)に絡みつく。
学生時代の甘酸っぱい記憶が、Kの中で蘇る。でもKには、完璧な妻がいる。
水のように静かで、優しく、すべてを赦すような女性。
私はCの体を借りて、Kに近づけるかもしれない。
あの時言えなかった言葉を、今度こそ……。
業に囚われ、悔しさと愛しさが交錯する霊魂の視点から描く、
遅すぎた想いと、静かな赦しの物語。
「上善は、彼女の如し」――
水のように、すべてを包み込む結末へ。