あらすじ
盲目になった第一王子・ルチアーノは、王宮の中心から離宮へと送られた。
視力を失い、立場も揺らぎ、周囲の善意さえ判断を奪ってくる世界で、彼は孤立していく。
離宮でのある日、ルチアーノは弟と元婚約者から「気遣い」という名の嘲りと「心配」という名の支配を向けられる。
その場で彼を救ったのは、ただ「王子が自分で立つための位置」を示した一人の侍女見習いだった。
ロゼッタ・マリーニ。
彼女は「手を引かない」「先回りしない」「判断を奪わない」ことを選び、一歩先だけを示す距離で、ルチアーノと向き合う。
助けるが、引っ張らない。寄り添うが、前に出ない。
それでも彼女の声、歩調、香り、音は、ルチアーノにとって世界の基準点になっていく。
ルチアーノが少しずつ自分の判断を取り戻していく中で、ロゼッタ自身もまた問い続ける。
——侍女として、どこまで踏み込むべきなのか。
——判断を奪わずに、人を支えることはできるのか。
一方、王宮では権力争いが静かに進み「見えなくなったはずの王子」は、再び政治の渦中へ引き戻されていく。
これは、距離感が少しずれた有能なお姉さん侍女が、盲目の年下王子を無自覚に振り回しながら、恋と自立と「導くことの意味」を選び取っていく物語。
※主人公は前世の記憶を持ちますが、本作は知識無双や転生チートを主軸とした物語ではありません。
※本作は複数の視覚障害当事者および関係者の体験や意見を参考にしつつ、フィクションとして再構成しています。
※表紙絵は貴様二太郎さんに描いていただきました。