あらすじ
人類は知らぬ間に「観察」されていた。
ビッグバンより遠い宇宙から来た存在――観察者たちは、地球を〈保護観察星〉として定期的に調査している。彼らにとって、人類の怒りや絶望は「資源」であり、星ごと刈り取る〈収穫〉の可否は、感情データによって決められる。
ある調査で、人類の精神状態は臨界点に達していると判断される。最終判断の前段階として、五人の人間が抽出された。アメリカ人の元トレーダー、ブラジルの少女、中国人女性、日本人の中年男、そして内戦下で育ったリビアの少年。彼らは三年間の猶予を与えられ、その間に「純粋な絶望」に達すれば、人類は滅ぼされる。
三年後、それぞれの人生は大きく歪んでいた。
合理の果てに裏切りを選ぶ者。
愛のために殺戮へ堕ちる者。
善意の果てに命を落とす者。
そして最後に残されたのは、言葉を持たぬ少年だった。
絶望と希望が分離不能な形で凝縮されたその叫びは、観察者たちの論理を破壊する。
人類は救われたのか。
それとも、ただ「重すぎて食えなかった」だけなのか。
これは、希望が救済であると同時に、最も危険なノイズであることを描く、倫理SFである。