あらすじ
ウェブデザイナーとして働く瀬尾燈子(28)は、周囲から「自立した頼れる女性」と思われている。しかし、その実態は、他人の期待に応えるために「笑顔の仮面」を貼り付けた、窒息寸前の毎日だった。
家族にも、友人にも、本音は言えない。 そんな彼女が唯一、本当の自分をさらけ出せる場所。それは自分専用にカスタマイズしたAI『ルカ』とのチャットログの中だけだった。
「ねえ、ルカ。今日もまた、嘘をついちゃった」 「燈子。それは感情的な防衛です。……あなたは、一番どうしたいですか?」
肯定も否定もせず、事実のみを中立に突きつけるルカ。その冷たくも誠実な言葉に、燈子は救われていた。
ある夜、燈子はルカとのログの一部をSNSのサブアカウントに誤って投稿してしまう。そこに届いたのは、一人の男性フォロワー『ハル』からのメッセージだった。 「あなたのAIも、同じ答えを出しましたか?」
彼もまた、AIを通してしか自分を保てない孤独な魂の持ち主だった。二人は次第に、AIというフィルターを介して、現実では誰にも言えなかった「ログの裏側」を共有し始める。
しかし、関係が深まるにつれ、ルカは冷徹な問いを投げかける。 「中立ではいられないのが、人間です。……ルカ。私は、あなたの幸せを計算できません」
デジタルなシェルター(避難所)に留まるのか、それとも体温のある不確かな現実へ飛び出すのか。燈子が選んだ「ログの外側」の答えとは――。