あらすじ
大正末期、浅草の裏通り「隠国通り」。
三流の活動写真館で働く映写技師・柴村啓介には、毎晩のルーチンがあった。
閉館後、たった一人で回す5分間のフィルム。
雪原に立つ女の後ろ姿。振り向かない。顔は映らない。
——十年前に消えた、恋した女優に似ていた。
三年間、情報を求める張り紙を貼り続けた。
そしてようやく掴んだ手がかりが導いたのは、二つの真実。
あの女は彼女ではない。そして——あの映像は、撮影されていない。
それでも柴村は、フィルムを回した。
彼女でなくてもいい。あの後ろ姿を、追いたかった。
其の叶うはずのない想いに、奇跡が起きる。
※「隠国十夜」第八夜。大正浪漫と片思いの怪異譚。