あらすじ

治承・寿永の乱を経て、源頼朝が鎌倉に幕府を開き、武士の世が産声を上げた黎明期。その陰で、十八年もの間、復讐の炎を絶やさずに生きた二人の若者がいた。 物語の端緒は安元二年。伊豆の所領争いに端を発し、工藤祐経の放った刺客によって、兄弟の父・河津祐泰が暗殺される。残された兄・十郎と弟・五郎は、母の再婚先である曽我の姓を名乗り、牙を研ぎ続けた。 兄・十郎は冷静沈着に時を待ち、遊女・虎御前との短い恋にさえ「死」の影を纏わせる。対する弟・五郎は、箱根権現に預けられながらも、荒ぶる情熱を武芸に注ぎ込んだ。 建久四年五月。頼朝による天下最大の軍事演習「富士の巻狩り」が、その舞台となる。 豪雨と雷鳴がすべてを塗りつぶす夜、兄弟はついに工藤の陣所へ乱入。十八年の執念を乗せた刃が、かつての父の仇、そして権力の象徴でもあった工藤祐経を貫いた。 本懐を遂げた兄弟を待っていたのは、数万の軍勢という名の断崖絶壁であった。十郎は乱戦の中で散り、五郎は頼朝の御前で自らの義を叫び、潔く刑場の露と消える。 富士の裾野に刻まれたのは、一族の私闘か、それとも武士としての意地か。 嵐が去った後の静寂の中、二人の少年の物語は、伝説となって鎌倉の歴史に深く沈み込んでいく。

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小説を読もう2026/02/04
  • 現在の作品相模の兄弟