あらすじ
午後の光と、焼きたての匂いが満ちる、小さなパン屋。
だけど、パンを買いに来る人は少ない。
その代わり、奇妙な依頼が舞い込む。
「僕の後始末を頼みたい」
「気づかれずに守ってほしい」
「明日まで、落ちないようにしてほしい」
栗栖澄音は、忍びとして育てられた。
足音を消すことも、間合いを詰めることも、
刃を落とす角度さえ――
彼女にとっては、パン作りの延長にある。
彼女の任務は、誰かを傷つけることではない。
世界からこぼれ落ちそうな人を、
焼きたての温度で、そっと引き留めることだ。
――毎回ちがう依頼と、毎回ちがう香り。
ただのパン屋じゃない、忍びの店が、ここにある。