あらすじ
深夜のコンビニで、初出勤の日。
同僚として出会った湊は、明るくて、優しくて、距離の取り方が上手い。
「同い年でしょ?」そう言われて、ひよりは頷けなかった。
私たちは、初めて会ったわけじゃない。
高校の図書室で、一度だけ当番が重なった日。
補習プリントに困っていた一年生の湊に、答えを教えた。
「ありがとうございます、ひより先輩!」――あの声が、まだ耳に残っている。
でも、湊は覚えていない。
覚えていないまま、「はじめまして」と笑った。
訂正すればいい。ただそれだけなのに、言葉が出てこない。
言ったら、今ここにある空気が壊れてしまう気がして。
同い年のふりをしたまま、隣に立つ。
距離が縮まる。優しさに触れる。
そして、触れてはいけないところまで、触れてしまう。
一方的な記憶を抱えたまま、壊れていく関係。
これは恋じゃない。でも、離れられない。
嘘をついたまま、関係を重ねてしまった二人の行方は――