あらすじ
かつて世界を脅かした闇は去り、人々は「勇者」と「魔女」を英雄と称えた。しかし、その栄光の影で、あまりに強大すぎる魔力を持つ魔女カタリナは、畏怖と疎外の視線に晒され、静かに姿を消した。彼女が選んだのは、人里離れた深い森の奥、古書と静寂に埋もれる隠遁生活。だらしないが心地よいその屋敷で、彼女は世界との関わりを断っていたはずだった。
ある冬の日、その静寂は破られる。森の中で行き倒れていたのは、かつてカタリナが救った国の王女、セレスティアだった。クーデターにより全てを奪われ、ボロボロになった少女。カタリナは「面倒だ」と顔をしかめながらも、凍え切ったその身体を見捨てることはできなかった。口うるさい妖精シャロが作る温かい料理、暖炉の火、そして他愛のない会話。怯えていた王女は次第に「メイド」という仮面を外し、孤独だった魔女は「誰かが待つ家」の温もりを知っていく。
しかし、安息の日々は長くは続かない。王女を追い、森の静寂を踏み荒らすのは、かつての盟友であり、今は歪んだ正義を掲げる勇者アレクセイ。過去の栄光と現在の平穏、守るべきはどちらか。凍てつく帝都の風に抗い、不器用な魔女が大切な「家族」のために立ち上がる、再生と愛着のファンタジー。