あらすじ
クラスでは目立たない存在の高校生・俺は、
ある日、学年一の人気者で“鉄仮面”と噂される女子――白石の口から、
聞き覚えのある名前を耳にする。
「ユイはズルいな……」
その二文字を聞いた瞬間、胸の奥がざわついた。
理由は分からない。
けれど、忘れていたはずの光景が、断片的に頭をよぎる。
その夜、昔よく遊んでいたゲームを起動した俺は、
ロード画面に表示されたプレイヤー名を見て言葉を失う。
――ユイ。
それは、白石が口にした名前であり、
かつて俺自身がつけた、主人公の名前だった。
翌日、衝動のまま白石にそのことを告げた瞬間、
教室の空気が一変する。
時間が引き延ばされたような感覚と、
白石の瞳に映る、歪んでいく自分の姿。
それ以来、俺と白石の距離は微妙に変わり始めた。
放課後の図書館。
制服を脱いだ白石は、噂とは違う、不器用で普通の女の子だった。
そして彼女は、俺しか知らないはずの“ユイが主人公のゲーム”を知っていた。
忘れているはずの記憶。
共有しているはずのない名前。
過去と現在が静かに噛み合い始める中で、
俺と白石は、互いの距離と心の正体に触れていく。
これは、
思い出せない「名前」から始まる、
少し不思議で、どこまでも現実的な学園恋愛譚。