あらすじ
聖女と呼ばれた六年間、私は一度も笑えなかった。
奇跡を求められるたびに、心が削れていく。
神殿に連れてこられた日から、私の人生は私のものではなくなった。
断罪の日、悪役令嬢に告発されて全てを失った。
聖女の座も、王都での居場所も、誰かに必要とされる理由も。
追放先は魔物の瘴気が漂う辺境。
死ねと言われているようなものだった。
けれど私は泣かなかった。
むしろ胸の奥で、小さな声が囁いていた。
やっと自由になれる、と。
辺境で薬師として生き始めた私の元に、二人の訪問者が現れる。
一人は私を告発したはずの悪役令嬢。
一人は真実を追う審問騎士。
彼女は言った。
あなたを解放したかったのだと。
彼は言った。
聖女の嘘を暴きたいのだと。
敵だと思っていた人が差し出した手。
信じることを恐れていた私に、選択の時が迫る。
告発者はなぜ私を救おうとしたのか。
審問騎士は何を失って、何を取り戻そうとしているのか。
そして私は、自分の名前で生きることができるのか。