あらすじ

十年間つけ続けた行動記録帳が、私の身を守る武器になるとは思わなかった。 伯爵家の一人娘リーネは、婚約者の不正を知ってしまう。 偽造された借用書。 自分の名を騙った負債。 問い詰めれば言い逃れ、庇えば泥沼。 だから私は、自分から婚約を破棄した。 手元に残ったのは、父が預けてくれた一枚の権利書。 街道の果てにある、屋根も壁も朽ちかけた小さな宿。 そこで出会ったのは、無口な修繕職人の男だった。 彼は理由を聞かない。 私も多くは語らない。 ただ、壊れた窓枠を直し、崩れた竈を組み直し、一つずつ宿を蘇らせていく。 けれど誰かが、この宿を潰そうとしている。 野犬を追い立て、商人を脅し、噂を流す影。 窓枠に刻まれた古い文字が示す、前の持ち主の想い。 記録と手順で不正を暴くか。 それとも静かに立ち去るか。 春の街道を、二人は歩き始める。 言葉にしない約束を胸に抱えたまま。

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小説を読もう2026/02/03
  • 現在の作品婚約破棄された令嬢は街道の荒れ宿を直しながら旅をする