あらすじ
節分の夜、商店街の豆まきの声を遠くに聞きながら、会社員のユイは空っぽのまま帰路についていた。「福は内」と言われても、入れる場所がない。そんな自分に気づいてしまったからだ。
商店街の裏路地で見つけたのは、節分の夜にだけ開くという「福の相談窓口」。
窓口係は淡々と問いかける。幸せはいつ消えるのか。休むと何が怖いのか。許可を誰からもらおうとしているのか。さらに現れたのは、生活感のある赤鬼アカ。鬼は「手放したい癖」だと言い、ユイに“置いていく鬼をひとつ”選ばせる。
ユイが置いたのは「休むのは悪いこと」という鬼。代わりに渡された福札は『明日、やることをひとつ減らす』。そして迷ったときのための豆三粒。帰宅したユイは、予定表から一つを消し、豆を噛む音で自分を現実に戻す。
翌日も世界は同じように回る。それでもユイの内側には、ほんの少し余白ができていた。節分の夜は終わっても、福を戻す手順は残る。大きな幸運ではなく、息が通ること。それが、ユイの「福は内」だった。