あらすじ
無意味な会議。
誰も読まない資料。
責任だけが宙に浮く職場──ブル・シット・ジョブの果てに、俺は過労死した。
目を覚ますと、そこは貴族社会。
しかも転生先は、社交界で弄ばれ、利用され、搾取され、
婚約破棄と断罪の末に毒を盛られかけた“悪役令嬢”だった。
もう二度と、都合よく使われる側には戻らない。
そう決めた俺は、冷静さと観察眼だけを武器に、生き残る道を選ぶ。
次の婚約者として現れたのは、
冷酷、無表情、心がないと噂される宰相ユリウス・フォン・アイゼン。
地位と利害による契約結婚──のはずだった。
なのに彼は、やけに近い。
声は低く優しく、指先は慎重で、
触れられるたびに、この身体だけが甘く熱を帯びていく。
(心は冷静なままなのに……身体だけが、先に堕ちていく)
ユリウスと手を組み、
元婚約者の嘘を暴き、
令嬢たちを弄んできた男を社交界のど真ん中で失墜させ、
貴族たちの偽善を、証拠と論理でひとつずつ叩き潰していく。
叫びも血もいらない。
笑顔のまま、逃げ道を塞ぎ、
相手が「自分で自分を壊した」と理解するまで追い詰める。
静かで、残酷で、痛快なざまぁ。
そんな姿を、誰よりも近くで見ていたのがユリウスだった。
冷たいはずの宰相は、
いつしか視線を逸らさなくなり、
距離を置こうとすれば、指先が迷いなく引き留めてくる。
優しさは深くなり、
独占欲は隠されなくなり、
気づけば逃げ道そのものが、彼によって塞がれていた。
これは、
ブル・シット・ジョブで人生を奪われた合理主義者が、
今度こそ自分の意思で恋を選び、
同時に、理不尽な人間たちを美しく裁いていく物語。
私はこの男に堕ちていくのか。
それとも最後まで、主導権を握ったままでいられるのか。