あらすじ

十二月初旬。東京都内の下町にある「東都地下鉄株式会社 遺失物センター」に新人の龍希が配属される。拾得物の受領、消毒、仕分け、保管番号の付与、照会、返還窓口での本人確認――淡々と続く手順の合間に、落とし物から小さな声が混じりはじめた。   同僚の結音は、困っている客に先に手を差し出し、あとで手順書を開き直す。惟月は人の輪からすっと離れて棚を点検し、くる美は「まあ大丈夫っしょ」と言いながらも失敗の後始末だけは妙に速い。瞭多は票番号を声に出して復唱させ、舞也子は繁忙日の配置表を先に組んで全員の逃げ道を残す。   だが、結び糸をはさみで切る“何か”が紛れ込み、照会情報が消え、返るはずの落とし物が返らなくなる。五年前に拾得された赤いマフラーの結び目を手がかりに、龍希たちは「返す」だけで終わらない一手――持ち主が言えなかった言葉まで、結び直す朝へ向かっていく。

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カクヨム
カクヨム2026/01/11
  • 現在の作品マフラーの結び目は、未来へつながる 東都地下鉄・遺失物センター日誌