あらすじ
天才発明家・佐藤さとしは、時間移動を可能にする装置を完成させた。
しかし彼は、その力を使おうとはしなかった。
3年前、親友だった新城あきらを自殺で失った過去に、再び向き合う勇気が持てなかったからだ。
感情学習型アンドロイド・ルーシーは、あきらの人生を解析し、悲劇の分岐点が高校時代の「進路選択」にあることを突き止める。
そして実験体として、単独で過去へ向かう決断を下す。
高校時代の世界で、ルーシーはあきら、そして若き日のさとしと出会い、二人と友人になる。
絵の才能を持ちながらも将来に不安を抱くあきらと、孤独な発明少年だったさとし。
ルーシーは未来を語らず、答えも与えないまま、三人で過ごす時間を積み重ねていく。
その中であきらは、「評価されるために描く道」ではなく、「自分が描き続けられる道」を選ぶようになる。
彼の進路は大きく変わり、未来の成功と引き換えに抱えていた孤独は、少しずつほどけていく。
だが、過去が書き換えられるほど、未来から来たルーシーの存在は不安定になっていく。
やがて彼女は理解する。
二人の人生を変えた“友人”としての自分は、この世界には残れないということを。
改変後の世界で、あきらは生きている。
さとしもまた、後悔ではなく「誰かと歩む未来」を選んでいた。
ただ一人、彼らの記憶に存在しないルーシーだけが、静かに時間の中から消えていく。
――本作は、時間SFを軸に、
友情と進路選択が未来を分岐させる瞬間を描いた、
喪失と希望のヤングアダルトSFである。