あらすじ
神の啓示を受ける「代行者」が、善悪を裁く世界。
孤児として育った少女チアーブルは、神に選ばれた存在として祭り上げられ、祈りと殺しの間で生きてきた。
疑うことを許されず、疑えば世界が壊れると信じ込まされながら、彼女は多くの命を裁いていく。
しかし反乱の中で、チアーブルは知ってしまう。
神も、預言も、すべてが人為的に作られた嘘だったことを。
それでも彼女は止まらなかった。
真実を知ったあとも、自ら選び、裁き続けてしまったからだ。
「知らなかった」では済まされない場所まで、心は踏み込んでいた。
神なき世界を取り戻したあと、チアーブルは理解する。
誰かが線を引かねば、世界はまた同じ過ちを繰り返す。
そして――その役を引き受けられるのは、もう人でいられない自分だけだと。
彼女は姿を消し、名も称号も捨てる。
法でも正義でもなく、均衡そのものとして世界の影を歩き続ける存在になる。
世界は救われ、平和は続く。
その代償が、彼女一人の永遠の地獄であることを、誰も語らないまま。
やがて、彼女を知る最後の一人・ネネだけが記録を残す。
これは、救われた世界の裏側で、
決して救われなかった一人の人間の物語。