あらすじ
「嘘(うそ)は、包帯だ」 誰の肌も傷つけず、誰の体面も汚さない。膿(う)んだ真実を隠して、日常というシステムを円滑に回すための、もっとも安上がりで平和な消耗品。
少なくとも、中堅広告代理店で『形状記憶の笑顔』を武器にする29歳の真壁悠介(まかべ ゆうすけ)はそう信じて、今日まで「正解」を選び続けてきた。
けれど、その「正解」は、ある少女には猛毒だった。
成瀬陽葵(なるせ ひまり)、20歳。 広告の完成予想図のような美貌を持つ彼女には、嘘を察知すると首筋が赤く粟立つ「真実へのアレルギー」があった。
「……最悪。あんたの言葉、全部カビの生えたシロップみたいな匂いがする」
剥き出しの真実を突きつけて仮面を剥ぎ取る、20歳の解剖医。 その後の絶望を「納得感のある嘘」で覆い隠す、29歳の清掃員。
最悪の相性を誇る二人が、便利屋『リリーフ』で引き受けるのは、SNS社会に澱(よど)む「幸福の嘘」の後始末。
欺瞞で守る平和か、真実で壊す救いか。 ――これは、決して交わらない二人の、不純な共犯関係の物語。