あらすじ

非常階段の踊り場に、用途不明の小さな窓がある。外壁に面しているはずのその窓を覗くと、なぜか街の様子が映っている。距離感は不自然で、街灯の下を歩く人々の動きが、近すぎる精度で見える。主人公は残業帰りの夜にその窓に気づき、以後、理由もなく繰り返し覗くようになる。窓は日常の動線に組み込まれ、観察は習慣化していく。 やがて、窓の向こうに人影のようなものが現れる。輪郭は主人公と似ているが、表情は判別できない。主人公が動くと、それも動く。ただし、わずかなズレがある。どちらが先なのかは分からないまま、同期は続く。夜になると足は勝手に非常階段へ向かい、主人公は窓を覗く行為から離れられなくなる。 窓の中の街で、偶発的な出来事が起き始める。人が転倒するなど、理由の分からない事象が繰り返される一方で、窓の向こうの人影は、何かを投げるような動きを見せる。因果関係は示されないが、主人公の身体にも異変が生じる。さらに、窓の向こうには、主人公の部屋と同じ配置の家具が見えるようになる。 ある夜、非常階段のこちら側にも違和感が生じる。背後に、あるはずのない「窓の枠」が現れ、空間の境界が反転する。主人公の記憶はそこで途切れる。最後に目にしたのは、窓のこちら側に立つ、自分に似た輪郭だった。それは非常階段を降り、日常へと戻っていく。何が入れ替わったのかは明示されないまま、異常は解決されず、日常だけが継続する。

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カクヨム
カクヨム2026/01/11
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