あらすじ
勇者アルスは、血の涙を流しながらかつての親友に告げた。
魔導師カイルがもたらす「勝利」は、あまりに悍(おぞ)ましかった。
効率のために仲間の肉体を「改造」し、人の魂を利用する。
彼は「救世」という目的のため、人としての倫理をすべて切り捨てていた。
「どうして怒るんだい? 僕のおかげで、生存率は九割を超えたんだよ?」
悪びれもせず、効率の正論を説くカイル。
勇者パーティは、自分たちが「人間」でいられなくなる前に、彼を野に放つという苦渋の決断を下す。
だが、彼らは知らなかった。
カイルの施した「無敵のバフ」は、彼自身がメンテナンスを続けなければ、肉体を内側から破壊する「猛毒」に変わることを。
勇者は正義のために彼を捨て、カイルは効率のために彼らを見捨てた。
追放された怪物は、しがらみを脱ぎ捨てて国家の「最適化」を開始する。一方、勇者たちは崩壊していく肉体を引きずり、カイルのいない「正しさ」へと突き進む。
これは、あまりに合理的な怪物と、あまりに高潔すぎた勇者たちが辿り着く、最悪の終着駅を描いた物語。