あらすじ
世界は、完璧に秩序を保っていた。願いはすでに叶えられ、救済は行き届き、混乱も欠乏も存在しない。光は均一に降り注ぎ、時間は止まり、死はただ通過するだけの現象に過ぎない。しかし、ネクロスはその世界に虚無を覚える。誰も求めず、誰も失わない。すべてが計算され、必要とされるのは存在そのものではなく、手続きだけだった。
彼は光の下の街を歩く。秩序は美しいが冷たく、願いの残骸だけが胸に微かに響く。時間の止まった空間、沈む世界、魂が削がれる処刑場――層ごとに異なる異常が彼を待つ。神々は姿を持たず、ただ世界を維持するための機能として存在する。その支配は完璧で、欠けることはない。しかし、理解しすぎたネクロスだけは、その秩序に収まらない。救済も処刑も、彼には届かない。
やがて、世界の手を離した深淵の先に、光が現れる。それは救済でも、処刑でもない。理解を奪うのでも否定するのでもない、ただ、存在を包む光。安定と安心の感触は甘く、しかし残酷で、選択を奪い、問いを溶かす。ネクロスは立ち止まらず、光を前に、自らの孤独と向き合う。理解を続けるか、光に委ねるか。答えはまだ決まらない。しかし、そこにある光は、すべての理屈を超えて、彼に問いかける――「分からなくていい」と。
世界は完璧で、秩序は絶対だ。それでも、理解を止められない者がいる。光の中で、彼はその事実だけを胸に抱き、次なる層へと歩みを進める。