あらすじ

高校二年の春、クラス替えで隣の席になった君は、特別目立つわけでもなく、よく笑うわけでもない、どこにでもいそうな女子だった。 消しゴムを貸したこと。一緒に帰ったこと。喧嘩もしたこと。 隣に座っていただけなのに、気づけば僕は、君のいない一日を想像できなくなっていた。 けれど君には、誰にも話していない秘密があった。 それは病気でも、大きな不幸でもない。 卒業と同時に、この街を離れること。 知らないままなら、名前を呼べたかもしれない。 知ってしまったから、呼べなくなった。 夏が終わり、文化祭が過ぎ、「来年も同じ席だったらいいね」と冗談みたいに言った君の横顔を、僕は今も忘れられない。 卒業式の日、僕は最後まで君の名前を呼ばなかった。 そして何年も経った今、大人になった僕は、あの春と夏を思い出すたびに考える。 ――あの時、名前を呼んでいたら、僕たちは少し違う未来を生きていたのだろうか。

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カクヨム
カクヨム2026/01/10
  • 現在の作品拝啓、隣の席の君へ