あらすじ
不毛の荒野で、世界を支配する農業が始まる。
貴族の三男として転生したカイは、地味な「植物魔法」しか持たないために無能の烙印を押され、死の土地と呼ばれる北の荒野へ追放されてしまう。
転生特典もチート装備もない。あるのは前世の記憶と、異常なほどの「雑草魂」、そして植物の性質を書き換える「品種改良」スキルだけ。
過酷な環境で生き残るため、カイは自身の魔力を土に注ぎ込み、非常識な農業を開始する。
「え、このトマト食べたら魔力が倍増した?」
「雑草だと思ったら、伝説の薬草だったんだが……」
カイが育てる作物は、食べるだけでレベルアップし、万病を治す神の果実だった。
やがて作物の匂いを嗅ぎつけた最強種・古のドラゴンが襲来するが、カイにとってはただの「腹ペコ害獣」。
自慢の野菜で餌付けして、ついでに畑の用心棒(ペット)にしてしまう。
一方、カイを追放した実家や王国は、深刻な食糧危機と経済破綻に直面していた。
彼らが生き残る唯一の道は、かつて捨てたカイの農園に頭を下げることだけで――。
これは、ただ美味しい野菜を作りたいだけの農家が、知らぬ間に世界経済と軍事バランスを牛耳ってしまう、規格外の開拓譚。
【登場人物紹介】
◆カイ
本作の主人公。前世は日本人の農業高校生。地味な「植物魔法」を持つが、その真価は魔力操作による「品種改良」にある。農作業に関しては異常な執着と才能を見せるが、世間の常識には疎い。荒野を開拓し、自分の理想の農園を作ることを目指す。
◆ベル
神話級の災厄として恐れられる黒銀のドラゴン。本来なら国を滅ぼす存在だが、カイの育てた「魔蜜カボチャ」の虜になり、農園の番犬(ドラゴン)として定住する。カイには懐いているが、他の人間には威圧的。
◆リゼ
放浪のエルフ商人。行き倒れていたところをカイに助けられ、彼の作る野菜の異常な価値にいち早く気づく。カイの農作物を独占契約し、世界中に売りさばく敏腕マネージャーとなる。
◆ガルド
カイの兄。実家である辺境伯家の次期当主。カイを無能と見下し、荒野へ追放した張本人。後にその判断が家を破滅に導くことになるとは知らずにいる。