あらすじ
古の時代。古代地中海に面した地域に、ひとつの国があった。
国の名はローマ。およそ一二〇〇年の歴史を誇る大国であった。
さて、その長い歴史を有するローマにおいて、特異な功績を挙げた男がいた。
男の名はマルクス・フリウス・カミルス。
ローマの偉大なる歴史家に「ローマ第二の建国者」と称えられた偉人である。
そんなカミルスは、だが、彼と同じ時代を生きた同胞市民からは憎悪されていた。
カミルスは、とにかく厳格であった。
彼に率いられた兵士たちは連戦連勝しても、略奪や敵市民への暴行をその彼に固く禁じられていた。
そのため、兵士らは勝っても鬱憤を晴らすことができなかったので、彼を恨んだのだ。
しかし、それでもカミルスは自らの高潔な思想を捨て去ることはしなかった。
「我々には、神々がお定めになられた『人の掟』を遵守する義務がある」
その思いを胸に、カミルスは自身に課せられた新たな任務を、すなわちローマに敵対する都市ファレリイの攻囲戦に着手する。
まさか、その包囲戦の最中に、自分の許に『人の掟』を踏みにじる悪辣な男が現れるとも知らずに……。
注意
本作品は「一応」複数の史書を参考にしつつ書き上げられた歴史小説ですが、細かい部分は史書を無視して作者が創作したり、また登場人物の言動に関しても独自のアレンジが加えられています。
ですので、「ここが史実と違う!」とか「この人物はこんなこと言ったりしない!」とかいった批判はしないでいただけると幸いです。
以下、登場人物の簡単な紹介となります。
マルクス・フリウス・カミルス
主人公。五〇歳(作中の時代である紀元前三九四年当時)。
ローマで毎年六名選出される将軍の一人に任命されたため、自分の担当とされた敵国ファレリイに軍団を率いていく。
後世、ローマの歴史家リウィウスに「ローマ第二の建国者」とまで評された男である。
教師
ローマが攻めたファレリイ国にて、裕福な家庭の子弟を相手に授業をして暮らしている。
教師としての評判は高く、ファレリイ市民も彼を尊敬していた。
しかし、そんな彼が攻囲中のファレリイから子供たちを連れ出し……。
護衛(ラテン語で「リクトル」)
準執政官であるカミルスのそばに立ち、彼の指示を執行する役目を与えられた男。
カミルスに忠実である。