あらすじ
夜は、安心できる場所だった。
決めなくていい距離。
名前をつけなくていい関係。
壊れないために保たれていた、静かな境界線。
夜浩と萌々花は、
家族のように近く、恋人にはならない距離で、
穏やかな時間を重ねていく。
けれど、
視線が変わり、
言葉が遅れ、
「何も起きていない」と信じていた夜は、
少しずつ揺れ始める。
これは、
選ばなかった恋を正解として描く物語ではない。
不安を分け合おうとしたこと。
覚悟を置こうとしたこと。
今を守るために、踏み込んでしまったこと。
その結果として、
戻れなくなってしまった距離の記録だ。
壊したくなかった。
それでも、壊れてしまった。
それでも否定できない時間が、確かにあった。
――そして、この物語は、
当時の感情だけで終わらせず、
時間を置いて初めて見えてきた理解までを描いている。
『境界線は、夜を越えて』は、
近づいてしまった二人が、
それでも互いを否定せずに終わっていくまでを描いた、
静かな長編恋愛小説である。