あらすじ
1941年、ハンブルク。
現代から転生した俺を待っていたのは、戦時下ドイツの慎ましい、けれど平穏な日常だった。
工場での単調な作業と、家族の温かな食卓。しかし、その日々は一通の「赤紙」によって終わりを告げる。
配属先は秩序警察(オルポ)。
最前線で敵の弾丸に晒される国防軍ではなく、後方の治安維持を担う「お巡りさん」の部隊。
「死なずに済む」「安全な仕事だ」と、同僚も、親方も、母親さえもが俺を笑顔で送り出した。
だが、俺だけは知っていた。
これから向かう東部戦線の泥沼で、このグリーンの制服が、何の返り血を浴びることになるのかを。
俺たちが守るべき「秩序」の正体が、歴史に刻まれた最悪の移動虐殺部隊(アインザッツグルッペン)への加担であることを。
隣で笑っている気のいい父親が、明日には子供に銃口を向ける。
正義を信じる若者が、明後日には略奪に手を染める。
逆らえば反逆、従えば怪物。
現代の知識を持つ工場作業員ハンスは、自らの人間性を、そして戦後の「審判」から自らの命を守り抜くことができるのか。
これは、狂った時代に放り込まれた「普通の人びと」の、凄惨で孤独な生存記録である。