あらすじ
誰にも気づかれないこと
それが私の唯一の才能だった
呼吸をするように気配を消せる私は
婚約破棄の現場ですら背景と同化していた
そんな私がスカウトされた新しい仕事
それは隣国の皇帝を守るための壁になること
物理的な壁ではない
執務室の隅で息を潜め
誰にも認識されずに主君を見守る役目だ
冷徹無比と恐れられる氷の皇帝クラウス
彼に近づく者はすべて凍りつくと噂されていた
けれど私は見てしまった
彼が誰もいない部屋で
茶色いクマのぬいぐるみに甘えている姿を
見てはいけない激甘な素顔
尊すぎて直視できない推しのギャップ
もし私の存在がバレたら
この特等席は即座に失われてしまうだろう
咳払い一つ許されない静寂の執務室で
私の密かな推し活が始まる
はたして私は最後まで
ただの壁として心を殺しきれるだろうか