あらすじ
とある会社。そのオフィスの一角で、電話のベルが鋭く鳴り響いた。新入社員の男はびくりと肩を跳ねさせ、反射的に背筋を伸ばした。喉をごくりと鳴らし、少し遅れて受話器を取った。
「お電話ありがとうございます。 株式会社――の――でございます」
――よし。
受話器に触れる直前までは、喉の奥が引きつるような緊張と忌避感があった。だが、いざ声を出してしまえば、喉元過ぎればなんとやらだ。社名と自分の名前を淀みなく言い切った瞬間、胸の奥にふっと小さな灯りがともったように安堵が広がり、彼は自信を取り戻した。
しかし――。