あらすじ

時は大正、文明開化の光が人々の欲望を照らし出し、その影にどろりとした情念が溜まる時代。  人知れず街を彷徨う茶の外套の男、橘。彼は自らを「庭師」と名乗りますが、彼が手入れをするのは土の庭ではなく、人の「心の庭」でございました。 ​ 橘は、自らの美学や執着、あるいは消えない罪悪感によって、心に修復不能な「綻び」を作ってしまった者の前に現れます。そして、その綻びに不思議な「花の種」を植え付けるのです。  種は、その者の最も輝かしい記憶や切実な生命力を吸い上げ、宿主の肉体を突き破るようにして、この世ならぬ美しい「異形の花」を咲かせます。 ​ 宿主は、花が咲き誇る一瞬の間だけ、自らの望んだ最高の絶頂や救済を得ますが、その代償として大切な記憶を摘み取られ、あるいは命そのものを削ることになります。  橘の真の目的は、人々を救うことでも、花を愛でることでもありません。彼は、誰にも看取られずに消えた「ある人」の最後の記憶を探すため、数百年という時を旅し、他人の人生の花の中からその欠片を収穫し続けているのです。 ​ これは、美しくも残酷な「花」と、それを剪定し続ける不変の男、そして美しさに呪われた人間たちが織りなす幻想怪奇オムニバスでございます。

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カクヨム2026/01/10
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