あらすじ
昼のあいだ、世界は完全に止まっている。
机の上、棚の隅、引き出しの中――そこにある小さなキーホルダーたちは、夜になるまで一切動けない。
夜。
“鍵輪の街”は静かに目を覚ます。
黒い外套をまとい、封印を司っていた異形の存在・クロウ。
驚いた表情が固定された、元人間のキーホルダー・マル。
二人は同じ鍵輪を持つ者として、机の上の世界で夜だけを生きていた。
この街には暗黙のルールがある。
昼は動けないこと。
夜だけ存在できること。
そして――鍵輪が外されると、どこへ行くか分からないこと。
そんな街に、ある噂が広がり始める。
「外に出られる鍵があるらしい」。
それは、人間の世界――“外”へ繋がる可能性。
だが同時に、戻れなくなる危険も孕んでいた。
変化を恐れながらも、外の記憶を持つマルは迷い続ける。
一方、すべてを知っているはずのクロウは、多くを語らない。
やがて夜の終わり、クロウはマルに選択を委ねる。
外へ行くか。
この街に留まるか。
「物語は、迷っている者を選ぶ」
外れない輪の約束を胸に、マルは“外”へ踏み出す。
残されたクロウもまた、静かに夜を見つめ続ける。
これは、夜だけ生きる小さな存在たちが、
自分の居場所と選択の意味を探す、現代ファンタジー。