あらすじ
20代の青年・九条漸(くじょう ぜん)には、幼い頃の奇妙な記憶がある。
夜泣きが止まらず、親に連れられて訪れた古寺の老僧は、彼を一目見るなり絶句した。
「この子の周りには、数えきれないほどの先祖が、隙間なく、何重にも取り囲んでおる」
それは守護というにはあまりに重く、執念に近い「死者の壁」だった。
以来、彼は死の淵に立つたび、偶然の重なりによって無傷で生還し続けてきた。
トラックが目前で大破しても、ビルから足を踏み外しても、彼は死ねない。
「まだ、こちらに来るな」という、無言の圧力が彼を現世に押し戻すのだ。
そんな彼が営むのは、死者が遺した重すぎる想いを「濾過」し、生者が持てる形に変えて引き渡す裏稼業――「漸託師」。
お調子者の情報屋・火野と、純粋ゆえに危うい助手・ハルを連れ、彼は今日も、死の気配が漂う路地裏へと足を踏み入れる。