あらすじ
大学の水泳サークルで副代表を務める理詰め男・藤堂恒一と、同じく副代表で感情先行型の西園寺カナは、三年間ほぼ毎日のように言い争ってきた腐れ縁だ。
ある月曜日、練習計画を決めるために二人きりで集まったミーティング中、「男女の友情は成立するのか」という話題から、いつもの口喧嘩が白熱する。
成立すると断言する藤堂と、現実的に否定する西園寺。
議論は次第に論理を離れ、互いの価値観と感情をえぐり合う展開へと変わっていく。
やがて、西園寺の行動が藤堂の平静を揺さぶり、二人は否応なく「異性として意識する」という事実に直面する。
それでも藤堂が友情成立論に固執する理由は、過去に西園寺が口にした“ある言葉”に縛られていたからだった。
「尊重」と「臆病」の境界線で立ち止まっていた藤堂と、強がりの裏で確かめたかった西園寺。
男女の友情をめぐる論争の行き着く先は、理屈でも逃げでもない、不器用な選択だった。
これは、友情という言葉に隠れてしまった好意が、ようやく言葉になるまでの物語である。
キャラクター紹介
藤堂 恒一(とうどう こういち)
大学三年生。水泳サークル副代表。
几帳面で理屈っぽく、物事を順序立てて考えないと気が済まない性格。感情論や曖昧な関係を避けがちだが、それは他人の言葉や選択を「尊重しすぎる」裏返しでもある。
西園寺とは一年時からの付き合いで、彼女の強気な言動に振り回されつつも、内心では強く意識している。男女の友情が成立すると主張するのは、自身の気持ちに踏み出さないための理屈でもある。
西園寺 カナ(さいおんじ かな)
大学三年生。水泳サークル副代表。
明るく勝ち気で、思ったことをすぐ口にするタイプ。周囲からは社交的に見られるが、感情を茶化しや冗談で包み込む癖がある。
藤堂とは何かと衝突するが、誰よりも信頼している相手でもある。