あらすじ
97歳で生涯を閉じた老人は、ただひとつの夢を叶えられなかった。
――バッターボックスに立つこと。
戦争、貧困、家庭環境、そして運の悪さ。
七歳から九十年間バットを振り続けた男は、ついに夢を掴めぬまま幽霊となった。
成仏できず彷徨う中、老人は“光”を見る力を得る。
人の胸に灯る、夢の輝き。
その中で、ひときわ弱々しく揺れる光を持つ巨漢の小学生に出会う。
自己肯定感ゼロ。
家庭は崩壊寸前。
学校では孤立し、野球部ではいじめられ、唯一の拠り所だった野球の才能すら自覚できない少年。
だが――
老人だけは気づいていた。
彼のスイングが放つ、異常なまでの“音”に。
「この子は、当たれば化ける」
そう確信した矢先、少年の前に現れたのは、眩い光を放つ転校生、天羽瑠十(あまばるーと)。
誰もが憧れる完璧な少年は、なぜか老人の姿を見ることができた。
そして、老人の言葉を“ねじ曲げて”少年に伝える。
「君には才能がないって言ってるよ」
少年の光は完全に消えた。
瑠十は笑う。
「野球をやらせたいなら、俺がアイツを徹底的に潰すよ?」
老人は悟る。
この少年は“光の強さ”ゆえに、他者の夢を喰らう怪物なのだと。
巨漢の少年の才能を信じる老人。
少年の光を奪おうとする瑠十。
幽霊と少年、そして“天才”の三つ巴の物語が動き出す。
老人は決意する。
自分が叶えられなかった夢を、この少年に託すと。
「儂が、お前をメジャーに連れていく」
幽霊コーチと、光を失った少年の挑戦が始まる。
これは夢を諦めた男が、もう一度夢を見るための〝第二の野球人生〟の物語である。