あらすじ
侯爵家の長女リシェルは、目覚めたとき、自分が異世界の七歳の少女として生きていることを悟る。
この世界では“奇跡”を起こす者だけが価値を持ち、妹エリアナは異色の瞳を理由に教会から「聖女」と認定されていた。その瞬間から、家族も使用人も妹だけを重視し、奇跡を持たないリシェルは存在しない者のように扱われていく。
やがてリシェルは、未来の断片を見る。聖女として消耗し、救われることなく倒れる妹。奇跡が起きなかった責任を負わされ、没落する侯爵家。そして自らも修道院へ送られる結末――この世界には、すでに定められた筋書きがあるのだと理解する。
リシェルは生き残るため、奇跡に頼らず知識を積み上げる道を選ぶ。一方、エリアナは祈り以外を禁じられ、人としての自由を失っていく。
十三歳の冬、未来は現実となり、聖女は倒れる。奇跡は起きず、妹は責められる存在となった。
そのときリシェルは、妹を「役割」から解放するため声を上げ、結果として家を追われる。しかし彼女は奇跡のない場所で自立し、小さな診療所を開く。
数年後、すべてを失ったエリアナは姉のもとを訪れる。聖女ではなく、一人の人間として。
奇跡のない世界で、役割を拒んだ姉妹は、自分たちの人生を選び直していく。