あらすじ
「姉さんの代わりに、お前が行ってくれないか? どうせ魔力のない『無能』なお前なら、怪物に食われても惜しくないだろう」
伯爵令嬢エルミラは、婚約者だったダリオと実の家族によって、呪われた地「辺境伯領」への生贄として馬車に押し込まれた。
相手は“怪物”と恐れられる辺境伯ヴォルフガング。その身は呪いの瘴気に蝕まれ、近づく者を溶かすと噂されていた。
だが、エルミラは知っていた。自分が「無能」ではないことを。
彼女は稀少な『浄化』の魔法使いだったが、家族に搾取され、その力を隠されていたのだ。
死を覚悟して辺境伯の屋敷に足を踏み入れたエルミラ。
そこで彼女が出会ったのは、呪いに苦しむ孤独な青年だった。
エルミラがそっと彼に触れ、浄化の光を灯した瞬間――恐ろしい怪物の仮面が割れ、中から現れたのは神々しいほどの美貌を持つ男。
「……暖かい。君が、俺の運命だったのか」
呪いが解けたヴォルフガングは、エルミラを宝石のように扱い、凄まじい独占欲で溺愛し始める。
一方、エルミラを捨てた実家と元婚約者は気づいていなかった。彼らの領地の清浄が、すべてエルミラの密かな浄化によって保たれていたことに。
瘴気に沈みゆく故郷から「戻ってくれ」と悲鳴が届くが、最強の魔導師となった夫がそれを許すはずもなく――。